東洋薬行(医療用)一覧
漢方の理想を求めます。日本はいま世界一の長寿国と言われる反面で高齢化社会となり、健康な身体で熟年を有意義に生きる為に、先人達が受け継いできた東洋医学(自然との調和の中で健康に生きる)の考え方がより広い方面から求められています。
漢方(中医学)
漢方(中医学)とは?
漢方(中医学)漢方(中医学)は、数千年の昔から中国で発達してきた伝統医学です。山野に自生繁殖する動植物、鉱物など(これらの乾燥品を総称して生薬といいます)を病人の体質・症状(証といいます)に合わせて配合し、服用させているうちに大変よく効く配合法(処方といいます)がたくさん見つかりました。後に、これらの処方をまとめて一つの医学体系にしたものが漢方(中医学)です。
現代の自然科学の教育を受けて育った私どもには、中医学は一見すると、得体の知れない非科学的なもののように思えます。しかし、中医学は古代からの陰陽五行説に基づいて先人達が、数千年に及ぶ経験をもとに作り上げたものであり、膨大な臨床経験から取捨選択されたものです。身体の異常現象を現代医学とは違った角度から診断するものです。
ぜひ、ひとりでも多くの方に漢方(中医学)の良さを知っていただき、本当のあなたの健康を取り戻して頂くことを願ってやみません。
近年、漢方薬は大変もてはやされています。これは、近代医学では治療が困難であった慢性病、ストレスからくる心因性疾患、不定愁訴など原因不明の症状に対して、漢方薬がよく適応することが熱心な研究者の努力によりわかってきたからです。
今では「漢方(中医学)などは古代の遺物」ぐらいにしか考えていなかったドクターの間でも、治療に漢方(中医学)が取り入れられるようになってきました。
これからは、西洋医学と漢方(中医学)などの東洋医学をいかにうまく使い分けるかが、重要になってくるでしょう。
漢方(中医学)には「未病を治す」という言葉があります。これは病気になる前の身体のひずみを早い時期になおし病気を防ぐことです。
人生の「癒し」と「生活習慣病」を予防するために、漢方(中医学)が非常に大きな力になると、ハル薬局では考えています。
証とは?
証
以下は漢方(中医学)の基本用語の説明です。
(1)概要:同一分類原理。病候パターンと方剤パターンは同一分類原理です。
【病侯パターン】←【証】 弁証
∥等価 ∥等価
∥ ∥
【方剤パターン】←【薬】 → 論治…漢方(中医学)治療法
(2)『証』:中医学(漢方)の分類による体質、症状のことです。
証は病名ではなく、その患者のある時に表れている病気の状態を示す言葉です。その証を見きわめることを「弁証」、弁証の結果から治療方法を決めることを「論治(ろんじ)」と呼び、2つを合わせて「弁証論治」といいます。
証の分類は、次のようになります。
(2.1)『表裏』:病位(病気の位置)の分類(上下概念)。
a.表証:頭部・外表、あごから上の位置。病巣が体表面に近い。急性。悪寒・発熱・頭痛・関節筋肉痛・クシャミ・鼻水・鼻づまりなどの症状です。
b.裏証:躯幹・内臓・口腔。病巣が体の内部にある。慢性。腹痛・腹が張る・内臓部・特に消化管などの症状です。
(2.2)『三焦』:裏証の病位の再分類(上下概念の補足)。
a.上焦:下顎底~胸隔 心・肺
舌から胃の上口
b.中焦:上腹 脾 胃
胃の上口から下口
c.下焦:少腹(下腹)と陰部 肝・腎 大腸・小腸・膀胱・胆
胃の下口から陰部
三焦のそれぞれは、右に記した五臓と六腑に対応します。
(2.3)『四要』:病位の内外概念。
a.衛分:防衛 (エブン) 浅
b.気分:元気が冒される |
c.営分:営養状態の異常 ↓
d.血分:血液が犯され全身に病邪が回る 深
※表証は、衛分と同等です。裏証は、気分、営分、血分に分類されます。
(2.4)『熱寒』:病性。陽気と陰液のバランスの崩れから病気の性質を見ます。
a.熱証:機能異常亢進的・炎症的な病の性質。発熱・ほてり・熱がり・口が乾く・顔色が赤いなどの症状です。
b.寒証:機能異常衰退的・萎縮的・アトニー的な病の性質。足腰が冷えて痛い、寝冷えでの腹痛寒がり・手足の冷え・頻尿など冷えの症状です。
(2.5)『実虚』:病勢(病気の勢い)についての分類。病邪(病気の原因になる要素)の勢いと体力との比較。
a.実証:体力(抵抗力)が強くて病邪がもっと強い場合。顔面紅潮・興奮しやすいガッチリ型、顔が太い、音声大で明瞭、胃腸強、便秘がち、腹壁に弾力性があるなどの症状です。
b.虚証:抵抗力が弱くて病邪が強いまたは弱い場合。気・血・津液が不足していたために発症した病気です。疲れやすい・元気がない・声が細いやせ型、筋肉弱、顔が細い、音声小さく不明瞭、胃腸弱、腹壁が軟弱などの症状です。
(2.6)『六淫』:熱寒にいたる病因。身体の外からの病因「外感」は六淫に分類されます。
a.風邪:神経が冒された場合 → 熱寒
b.寒邪:低温の侵襲を受けた場合 → 寒
c.暑邪:体温が発散しきれない場合 → 熱
d.火邪:刺激を受けた場合 → 熱
e.湿邪:体内水分が適量に排泄されない場合→ 熱寒
f.燥邪:体内における水分不足 → 熱寒
(2.7)『四傷』:実虚にいたる病因。
a.気傷:生気異常 → 実
b.血傷:血液異常 → 実虚
c.痰傷:痰水異常 → 実虚
d.欝傷:消化異常 → 実虚
(2.8)『五臓』:機能的内臓です。
a.肺:呼吸作用+皮膚作用(皮膚呼吸の作用)宣発・粛降・気を司る。
呼吸の調節機能のほか、皮膚、免疫機能、水分代謝などとも関わりがあります。体を取り巻くバリアーのような働きを持っています。
b.心:心臓の作用+こころの作用(脳の作用)。血脈・神(しん)を司る。
心臓と同じ働きをもつほか、大脳にかかわる精神活動(意識、思考、睡眠など)を支えています。体の働き全体を統括する司令塔の役割を担っています。
c.脾:運化・昇清を司る。
消化吸収を通して生命力を補充する働きをつかさどります。栄養を運び、エネルギー源となる器官です。西洋医学でいう消化器官や膵臓と関係しています。
d.肝:疏泄を司り、血を貯蔵する。
気血がスムーズに動くように調節する機能をさします。西洋医学でいう肝臓の働きも含んでいますが、感情や自律神経と関係し、ストレスによる影響を受けやすいものです。
e.腎:腎の作用+副腎の作用+性ホルモン作用。水を司り、精を貯蔵する。
腎臓と同じく水分代謝の働きを担うほか、成長・発育・生殖などにも関連するので、副腎や生殖器などの働きも含まれています。
(2.9)『気・血・津液』:生命を維持するための3要素です。漢方では生命活動する上で、身体にとって必要な生理的な物質として気・血・津液の三つを考えます。健康な状態とはこの気・血・津液の働きがうまく機能しているときであります。逆に気・血・津液のアンバランスは病的な状態を現します。漢方の素朴的な病因論でありますが、西洋医学でいう自律神経系、循環器系、体液系、内分泌系などの要因にあたるものと考えられます。漢方の処方は、これら気・血・津液の調和をはかるように作られています。
a.気:人間を生かしているエネルギー、生命力そのものです。生命活動する上で必要な身体のエネルギーのもとになるものをいい、精神または精神神経系の働きや、血や水を動かす力があります。
気のバランスが悪い時には、気が上の方にのぼせて、イライラしたりするもの、漢方では 気の上衝(じょうしょう)といいます。また、気が停滞しておなかが張って苦しくなったりもします。漢方では 気滞(きたい)といいます。どちらも血や水の流れに影響を与えます。
b.血:気によってめぐらされている血液そのものです。生命活動する上で必要な栄養物質であり、全身の組織や器官を滋養します。
血のバランスが悪い時には、血行障害などによる症状を起こしやすくなります。俗に オ血(おけつ)、古血(ふるち)といわれるものです。血のあるものは、一般に顔色は赤黒いか青黒く、皮膚や粘膜に紫斑点や青筋などが多く見られます。
c.津液:体内にある血以外の液体です。生命活動する上で必要な体液成分で、身体を潤し、円滑にする働きであります。
津液のバランスが悪い時には、水分の代謝が円滑に行われていない状態で、漢方では水毒(すいどく)といいます。胃部の振水音、下痢または軟便、嘔吐、尿量減少あるいは多尿、浮腫(むくみ)、動悸(どうき)、めまい、耳鳴、頭痛などの症状は、水毒によることが多いものです。
(2.10)『経絡』:臓腑と全身の各組織を連絡、調節する通路です。気血津液が人体を上下内外に通行する道です。西洋医学における血管、神経、内分泌の構造および機能の一部を含みます。経絡の通過性という生理機能は大切で、経絡の流れが悪くなると、病気が発生しやすくなり、痛み、しびれ、腫瘍、出血などが現れます。