人間の活動のエネルギー源である「気」。この気の量が不足しているのが「気虚」体質です。
気は、食べ物が胃腸で消化吸収されて作られます。気虚体質は胃や腸が弱く、消化吸収機能が低下しているため、上手に気が作れない状態のことです。その結果、風邪などのウイルスやアレルギーに対する抵抗力も落ちてしまいます。
胃腸を冷やす食べ物や消化しにくい生ものは、できるだけ避けるようにしましよう。また、食べ過ぎも禁物です。温かく消化のよいものを適度に食べるようにしてください。
気虚タイプの人は、ほとんどが冷え性です。胃腸も冷えているので、消化機能全般が低下しています。
そこでこのタイプの食養生は、体を温め、胃の消化機能を高め、胃腸に負担をかけない食事が基本になります。料理には、「平性」「温性」「熱性」の食材を火を通して使用します。体を冷やす冷たい食べものや、刺し身などの生ものは避け、消化のわるい脂っぽいもの、甘いもの、刺激の強いものもとりすぎないようにしましょう。
食が細く、下痢や軟便になりやすい人には、消化機能を高める長いも、大和いもなどの山いも類が効果的です。そして山いもであっても、「山いも入りお好み焼き」「とろろ入り味噌汁」などのように、加熱して食べるようにしましょう。
体を温める代表的な食材には、羊肉、えび、にら、にんにく、ねぎ、玉ねぎ、しょうが、山椒、栗、くるみ、シナモン、紅茶などがあげられます。
疲れやすくてかぜをひきやすい気虚タイプには、「気」を補う食材が欠かせません。
「補気の王様」といわれる朝鮮にんじん、牛肉や鶏肉(とりにく)などの肉類や、えび、うなぎ、山いもなどは、食べるとすぐに「気」を充実させるためにはたらきます。主菜や副菜にたくさん使って、足りない気を効果的に補いましょう。
また穀類、いも、豆、きのこは、胃の消化機能や新陳代謝を高め、気を補うために大切な食材です。毎食きちんととるようにしましよう。
●冷たいもの、生もの、脂っぽいものおよび、甘いものは取りすぎないように注意しましょう。
●刺激の強い食材(唐辛子、わさび、コショウ、山椒)は、なるべく控えましょう。
●チョコレート、小麦粉、白砂糖、うこん(ターメリック)、海藻、レタスは、なるべく避けましょう。
●気になる不調を自分で手軽にケアする方法として、おすすめなのが『ツボ』(経穴)です。
数千年の歴史を持つ中医学(東洋医学)の治療法です。
WHO(世界保健機関)の主導でツボの名称統一を行うなど、最近は世界的にも関心が高まっている治療法です。
「お茶で一服する」「トイレに立つ」といったタイミングでツボを押すことを、ぜひ習慣化しましよう。その場で不調を解消できるだけでなく、病気への抵抗力や免疫力を日々、高めていくことが可能です。
気が集まる気海です。呼吸器系にも消化器系にも作用します。代謝がアップします。
人間の活動のエネルギー源である「気」。この気の量が不足しているのが「気虚」体質です。
気は、食べ物が胃腸で消化吸収されて作られます。気虚体質は胃や腸が弱く、消化吸収機能が低下しているため、上手に気が作れない状態のことです。その結果、風邪などのウイルスやアレルギーに対する抵抗力も落ちてしまいます。
胃腸を冷やす食べ物や消化しにくい生ものは、できるだけ避けるようにしましよう。また、食べ過ぎも禁物です。温かく消化のよいものを適度に食べるようにしてください。
●世界の伝統医学の中でも、最も理論体系が整い、豊富な治療手段を備え、長い経験の蓄積があり、実用性の高いのが中医学(東洋医学)です。
この医学は病気の治療ばかりでなく、養生思想も内容が豊かで、病気の予防や健康増進にも活用できます。
その大きな特徴は、一人一人に合わせたやさしい眼差しで、各個人の体質を見極め、体質や体調に合った養生や生活改善を提案することです。
疲労でもっとも多いタイプは、活力の源である「気」が不足して起こるものです。気が不足する原因には、もともとの虚弱体質、加齢、長引く病気や手術、過労や精神的ストレスなどがあります。
ぐっすり眠れば気が回復するので、朝はすっきり目覚めますが、一日の終わりには、また疲れてしまうタイプです。気の不足を放置すると、血が不足する血虚を招くこともあります。あまり無理をせず、十分な休養をとりましょう。
忙しすぎる生活や睡眠不足は、「気」を消耗してしまいます。しかも、寝不足だと元気が出ないこのタイプは、寝る時間を惜しんでがんばっても、思ったほどの成果は上がりません。
効率よく仕事や家事を片付けるためにも、睡眠時間はたっぷりとることが大切です。
日中もあまり根を詰めず、休息時間をこまめにとるようにして、10分でも時間を見つけて昼寝ができれば理想的です。
(remarks)
●瀉心湯3兄弟の処方
半夏瀉心湯には、構成する生薬は同じでも、甘草が主薬となる「甘草瀉心湯」と、生姜を加えて主薬とする「生姜瀉心湯」という2種類の兄貴分的処方があります。甘草瀉心湯は、甘草の量を1g増やすだけですが、1日に数十回もトイレに通うようなひどい下痢(泄瀉)に効果があり、そのための不眠も改善されます。さらに、胃腸だけでなく、声が枯れてしまうようなノイローゼや夢遊病まで治った例があるそうです。
また、生姜瀉心湯は、半夏瀉心湯の乾姜2gを1gにして、新たに生姜を2g加えた処方です。胸の中が苦しく吐き気がする、胸焼けがするといった症状に効き、女性の場合は悪阻(つわり)にも効果があります。
このように、生薬の量を少し増減するだけで効力の方向転換ができる処方があります。今回の瀉心湯3兄弟は、主薬となる生薬を増減しただけですが、効能は上記のように異なってくるのです。
甘草瀉心湯は、半夏瀉心湯と生姜瀉心湯とともに瀉心湯3兄弟と呼ばれる処方のひとつです。使用目標は、半夏瀉心湯を基準にして判断すると分かりやすいでしょう。
半夏瀉心湯が合うのは、みずおち辺りがつかえる心下居硬、食欲不振、おなかがゴロゴロと鳴る腹中雷鳴がある場合です。これらの症状を中心に、病状が上に現れるときは吐き気や嘔吐、下に現れたときは消化不良などで下痢(泄瀉)になります。このうち、腹中雷鳴の症状がひどくなり、精神不安が加わってきた場合には、甘草瀉心湯が有効になります。つまり、心下居硬があり、胃腸全体が腹鳴するといった場合には半夏潟心湯で、その症状がより急性で、嘔吐も下痢(泄瀉)もあり、特に腸の症状が強いときには、甘草瀉心湯が適しているのです。
ちなみに、この症状が胃の方に片寄っている場合には、生姜瀉心湯を用いると効果的です。
甘草瀉心湯の処方は、漢方の古典『傷寒論』と『金匱要略』の両方に紹介されています。ことに『金匱要略』では「狐惑病」(こわくびょう)の治療薬として挙げられています。狐惑病とは急性熱性病のような病状をしており、「眠いのに眠れず、寝ても起きても常に不安がつきまとう。咽喉に潰瘍ができたときは惑で、陰部に潰瘍ができたときは狐である。食欲不振で食べ物のにおいをきらい、顔色が赤、黒、白などに変化する。のどの辺りに潰瘍があるときは声が枯れる」という症状が現れる病気です。
つまり、甘草瀉心湯は心下居硬、腹鳴、下痢(泄瀉)などの症状を伴った不眠や幻想、夢遊、強迫観念などの精神科領域の症状にも応用できる、ということです。
また、口内炎、舌炎、声枯れなどにも応用できますが、この場合も胃腸症状や精神症状が伴っているときに効果がある、とされているのです。
精神病の原因はさまざまですが、現代に非常に多いストレスもそのひとつに挙げられます。ストレスが胃腸に負担をかけ、胃腸が弱ってくると、それがまた精神に悪影響を及ぼします。その悪循環を改善し、心身ともによいバランスを保てるように作用するのが甘草瀉心湯なのです。
甘草瀉心湯の使用目標となる下痢(泄瀉)は、1日に何十回もトイレに行くような激しいもので、軟便というよりも水の様な便です。
このような症状から、間違えて人参湯を服用してしまうことがあります。
人参湯で治る下痢(泄瀉)は、排泄後に疲労感が現れることが特徴で、その逆に、一時的に気分がよくなる場合は甘草瀉心湯などが合うのです。
また、甘草瀉心湯を用いることによって、下痢(泄瀉)がかえってひどくなってしまう場合があります。このようなときには人参湯が適しており、その反対に、人参湯で治らない下痢(泄瀉)には甘草瀉心湯がよい場合があります。
さらに、ビールを飲んで下痢(泄瀉)になってしまったときは、ほとんど甘草瀉心湯で症状が治まるので、覚えておくと便利です。