(remarks)
●家庭の常備薬を自分で作る
紫雲膏が適応する症状は非常に幅広いので、常備薬として持っているととても重宝します。さらに、生薬などの材料がそろうならば家庭でも作ることができます。
まずゴマ油を180度前後になるまで加熱します。そこで、黄蝋と豚脂を加えて溶かしていき、次に当帰を加えてから火を弱めます。140度ぐらいにまで温度が下がったら紫根を加え、ほどよい赤紫色になったところで火を止めます。適温のときに麻布などでこしてカスを取り除き、容器に移して冷まします。固まったら、日の当たらない常温の場所で保存しましょう。新鮮で上質な材料を使えば約5年間は保存できます。
紫雲膏の色は、油の温度や容器に移し替えたときの冷やし方などで、鮮やかになったり濃くなったりしますが、効果に差はありません。しかし、製法不良や保存不良、あるいは保存期間の超過で油が酸敗し、異臭がしたり変色した場合には使用を控えましょう。なお、油を煮て作るので、やけどには十分注意してください。
紫雲膏の構成生薬は、潤肌膏同様、基本的には紫根と当帰の2つです。2つの生薬に共通する作用(抗炎症・鎮痛作用など)が強化されるほか、紫根には、肉芽促進作用といって、損傷した皮膚組織を再生するという重要な働きがあります。この働きが十分発揮できるように、塗りやすく、かつ蒸発・乾燥させずに浸透させ、皮膚の潤いを保護するといった役割をゴマ油、黄蝋(おうろう)、豚脂が担っています。また、これらの構成生薬のおかげで、西洋薬と違って患部がかゆくならずに治っていくのです。
また、切り傷、すり傷、刺し傷などのような外傷全般に共通することは、時間の経過とともに傷口から雑菌が繁殖し、症状が悪化してしまうということです。そうなる前に紫雲膏を塗ってみましょう。紫雲膏自体にも消毒作用はありますが、早くきれいに治すためには傷口を水で洗い流し、雑菌が繁殖しないうちに使うことがポイントです。同様に、痔の痛みにも、肛門を清潔にしてから紫雲膏を使います。米粒ぐらいの量を塗るだけで治っていくはずです。
このほか、湿疹やいぼ、たこ、うおのめ、水虫など、皮膚に関する炎症や変形にも有効です。中でも、うおのめは神経を刺激するため、触れると痛みます。下手に切ったり削ったりすると痛みを伴うだけでなく、その刺激でさらに大きくなったり、あるいは残った根から再発することもあります。このようなうおのめにも、紫雲膏を塗り、医療用のテープを貼って毎日取り替えると、痛みもなく1週間から10日ほどで根こそぎ取れてしまいます。